トヨタ、「カイゼン」をグローバルに展開

トヨタは、在庫削減と工場の生産性向上に向けた取り組みをグローバルに展開します。開発・生産・販売が一体となって部品の必要性と重複を特定し、国内外10工場で部品点数を最大80%削減します。この取り組みは、米国と欧州の8工場で実施されます。自動車業界において、特に電動化を背景に競争の焦点が急速に変化する中で、トヨタは競争力維持のため、「カイゼン」の取り組みを拡大していきます。

工場スペースの35%を余剰スペースに

トヨタは、2023年から生産効率向上のための取り組み「AREA 35」を実施します。類似部品の削減や部品選定の見直しを通じて在庫を効率化することで、工場内の余剰スペースを35%にすることを目指します。

トヨタは世界最大の自動車メーカーであり、年間1,000万台の車両を生産・販売しています。世界に54の組立工場を、日本国内には約4,300のトヨタ販売店を展開しています。トヨタの広大なサプライチェーンは、日本国内だけでも約6万社のサプライヤーに及びます。

1台の車には約3万点もの部品が使われています。部品の種類が膨大であるだけでなく、営業、生産、開発の3部門をまたいで状況を把握するのは困難です。ほとんど同じ部品が混在し、出荷量が少ない在庫がスペースを占有しているケースも少なくありません。

トヨタの中型車事業を統括する「中型車カンパニー」の責任者である上田善文氏は、AREA 35は「1,000万台の生産に必要な資産が十分に活用されているか」という課題に取り組むものだと説明しました。トヨタは生産拡大への投資だけでなく、既存の生産拠点の徹底的な見直しを通じて利益率の確保にも取り組んでいます。

また、トヨタは車種ごとの部品点数の削減にも取り組んでいます。上田氏によると、AREA 35は「状況を俯瞰的に捉え、課題を浮き彫りにする」ものです。AREA 35の実行委員会には、トヨタの営業、開発、工場、購買部門から約40人が参加しています。

これは単に部品点数を削減するだけではありません。トヨタの宮崎洋一副社長は、「車両の仕様は多岐にわたりますが、販売拡大の可能性が低いものもあります」と説明しました。AREA 35は、「需要を的確に把握し、仕様と部品点数を合理化すること」を目指しています。

国内生産台数は8万台増加する可能性があります。

これらの対策を実施している10工場では、部品点数を最大80%削減し、平均35%のスペース拡大を実現しました。これは、国内で年間8万台の生産台数増加に相当します。

トヨタは当初、フロントガラス、ワイヤーハーネス、ヘッドライトなど、かさばり、スペースを占有する部品に注力していました。例えば、元町工場(愛知県豊田市)では、計器類を取り付けるインストルメントパネル用のワイヤーハーネスは101品番あり、そのうち42品番は未使用となっています。必要不可欠な部品のみを厳選することで、開発・生産効率が向上するだけでなく、休憩スペースの確保など従業員の利便性向上にも貢献します。

AREA35は、主に日本で展開されており、2025年までにチェコ、カナダ、米国テキサス州を含む18工場に拡大される予定です。上田康史工場長は「この取り組みはまだ終わりではありません」と述べています。各地域・工場にはそれぞれ独自の課題があり、事務局を中心に情報や事例を共有し、各工場の課題解決に役立てていく計画です。

トヨタは、ガソリン車などの内燃機関車から、エンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)、モーターのみを使用する電気自動車(EV)、水素を使用する燃料電池車(FCV)まで、幅広く事業を展開しています。 2025年度(2026年3月期)の研究開発費は前年度比3%増の1兆3,700億円、設備投資は同8%増の2兆3,000億円と、いずれも過去最高額となる見込みです。電動化や自動運転といった競争の軸足が変化する中で、投資の増加は避けられません。

同じ車種でも、動力​​源によって必要な部品は異なります。そのため、トヨタにとって部品品種の適切な管理は極めて重要です。トランプ政権による関税導入は、自動車生産のグローバルな現地化を促すと予想されます。多様な車種構成はトヨタの強みの一つであり、競争力を維持するためには、グローバルで継続的なカイゼン活動が不可欠です。