USD/JPY為替レートは149円まで上昇
外国為替市場では、徐々に円高・米ドル安の動きが強まっています。 2月20日の東京市場で円の対ドル相場は1ドル=149円付近となり、2024年12月初旬以来、約2カ月ぶりの高値となった。日本銀行(中央銀行)による追加利上げ観測に加え、ウクライナ情勢や米連邦準備制度理事会(FRB)の資産削減ペース鈍化観測も円高要因となっている。
三井住友銀行の鈴木博チーフ為替ストラテジストは20日、円高が進んだことについて「外交やトランプ関税の影響を受けにくいとみられる円が買われている」と指摘した。
その理由はウクライナ情勢とFOMCだ。
2月20日の東京外国為替市場で円高が進んだ要因は、2つの海外要因であった。一つ目は、ウクライナ情勢に対する懸念が高まっていることです。トランプ米大統領は米国時間2月19日、ソーシャルメディア上でウクライナのゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼んだ。
ゼレンスキー氏は「トランプ氏はロシアが作り出した偽の情報空間に生きている」と反応した。前日には米国とロシアの高官らがサウジアラビアで会談した。ロシアとウクライナの紛争の停戦への大きな期待は、トランプ大統領の発言により突然薄れてしまった。
もう一つの要因は、連邦準備制度理事会(FRB)が2月19日に発表した、1月28~29日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録だ。米国債などの保有を減らす量的引き締め(QT)については、会合で「停止や減速を検討すべきだ」との意見が示された。
連邦準備制度理事会は、COVID-19パンデミック中に市場を安定させるために数兆ドルの債券を購入した。バランスシート上の債券保有額は2022年に約9兆ドルでピークに達した後、減少し始め、現在は7兆ドルを下回っている。
みずほ銀行の主席市場エコノミスト、唐鎌大輔氏は「QTに関する議論は意外だった」と指摘した。市場では一般的に、FRBがQTを停止すれば、米国の金利に下押し圧力がかかり、米ドルがさらに下落すると考えている。
日銀による追加利上げの期待
現在の外国為替市場では、日本銀行がさらなる金利引き上げに踏み切るとの見方がすでに広がっており、これが円高の要因となっている。日銀の高田一審議委員は19日、宮城県金融経済審議会で「(経済・物価の)期待が実現すれば、さらなる調整局面に入る」と述べた。市場では、これは日本銀行が金融引き締めに前向きな姿勢を示していると一般的に解釈された。
市場では、日本銀行が予想よりも早いペースで政策金利を引き上げるのではないかという期待が高まっている。国内債券市場では、長期金利の指標となる新発10年国債利回りが2月20日に1.440%と、2009年11月以来の高水準となった。 「日米金利差の縮小が、足元の円高・ドル安の基盤となっている」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券為替ストラテジストの翔田龍氏)との見方が一般的だ。
今後の円相場について、ソニーフィナンシャルグループの小川正樹主任アナリストは「結果を左右するほどの円買い材料はなく、やみくもな円高は持続しない」と指摘。「一時的に150円を突破しても、それは短期間にとどまるだろう」とみている。これは円高傾向の転換点ではないが、市場は円高を押し上げる要因に対して依然として非常に敏感である。