日産とホンダ、米国で車両共同開発協議

日産のイバン・エスピノサ社長は11月13日、日本経済新聞のインタビューで、ホンダと米国で車両共同開発について協議していることを明らかにした。また、競争力の要となるコア部品であるパワートレイン(駆動システム)の共同開発でも協業していく考えだ。高関税など、米国市場が厳しさを増す中、両社は生き残りをかけて協力していく。

エスピノサ社長は「ホンダと米国で車両およびパワートレインの共同開発の可能性について協議している」と述べた。ただし、開発対象が電気自動車(EV)かハイブリッド車(HV)かは明言を避けた。パワートレインは、駆動モーターとエンジンのコア部品である。

ホンダは、車両共同開発について「様々な協力の可能性について協議しているが、まだ最終決定したものではない」とコメントした。

両社は2024年8月、電気自動車(EV)開発を含む包括的な事業協力を開始した。両社は昨年12月に合併交渉を発表したが、2025年2月に決裂した。関係再構築のため、両社は協力関係の構築を協議している。

米国における両社の協力検討は、危機感から生まれたものだ。日産は、主力車種であるハイブリッド車(HV)を北米市場に予定通り投入できず、販売が低迷している。トランプ政権による関税導入により、事業環境は厳しさを増している。ホンダとの共同開発は、主に米国市場における商品競争力の強化につながる。

ホンダの四輪事業も2025年4月から9月にかけて損失を計上した。北米では、電気自動車(EV)販売へのインセンティブ強化が収益性の低下につながっている。当面の課題は、電気自動車を中心としたコスト競争力の向上だ。

エスピノーザ氏は、「両社は米国に広範な生産体制とサプライチェーン、そして強力な開発力を有している」と強調した。同氏は「結果的には関税の影響を緩和できる」と確信しており、「他の市場においても協力の余地がある」と述べた。

複数の情報筋によると、日産は稼働率の低い米国工場でホンダ向けピックアップトラックの生産を検討しているという。エスピノサ社長は「様々な選択肢を検討している」と述べ、明確な回答は示さなかった。

日産とホンダは以前にも経営統合を進めたが、信頼関係の構築に失敗し、交渉は決裂した。エスピノサ社長は現段階で「合併や資本協力に関する協議は行っていない」と述べた。協力関係がより良い結果を生めば、両社は資本協力を再検討する可能性がある。

さらに、日産がフランスのルノーとの資本協力を維持するかどうかも焦点となっている。両社は2023年に資本関係を見直すことで合意し、それぞれ15%を出資している。また、2025年には相互出資義務を10%に削減することを決定した。

エスピノサ氏は、「長期的な目標が合致するかどうか次第で」変更の可能性もあると指摘した。日産が出資している三菱自動車との関係については、「変更する理由はない」と述べ、今後も維持していく方針を示した。

日産は事業再編に向け、世界で2万人の人員削減と7工場の廃止を柱とする統合を進めている。エスピノサ氏は「工場の削減は計画通り進める」と述べ、さらなる人員削減には否定的な姿勢を示した。