中国人観光客の日本における消費額が減少

訪日中国人観光客の消費額が減少している。三井住友クレジットカード株式会社が国・地域別に実施した調査によると、11月のクレジットカード利用額は前年同月比8%減となり、2カ月ぶりにマイナスに転じた。中国政府が11月に日本への渡航を控えるよう勧告したことが影響している。日本の百貨店における免税売上も減少に転じており、日中関係悪化の影が経済に深まっている。

三井住友クレジットカードは、自社のデータアナリティクスサービス「Custella」を用いて、訪日観光客の決済動向を分析した。海外で発行されたVisa、Mastercard、中国銀聯カードを対象に、利用者を出身国・地域別に分類し、指数を用いて利用額を算出した。

調査対象は10カ国・地域と「その他」で、総利用額は前年比22%増加した。米国、台湾、オーストラリアを含む7カ国・地域で増加が見られ、平均成長率は29%でした。減少したのは、中国本土、香港(微減)、タイ(4%減)の3カ国・地域のみでした。国・地域別の取引高を見ると、米国が20%増でトップ、次いで中国本土(11%)、台湾(9%)となっています。

2025年3月から8月までの中国の取引高は、円高とハイエンド消費の終焉により前年比で減少しました。円安が進んだ9月と10月は、中国の建国記念日の祝日が重なったことでプラスに転じました。

高市早苗首相の国会審議を受け、中国政府は11月14日から国民に対し日本への渡航自粛を勧告しました。この勧告発出後の2週間は、11月全体のデータを大きく押し下げたようです。

日本の百貨店業界も影響を受けています。主要百貨店の12月1日から14日までの免税売上高をみると、J.フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋は前年同月比9.4%減、高島屋は9.8%減、三越伊勢丹は約20%減となりました。高島屋は、中国人客のみを対象とすると23.9%もの減少となり、「日本への渡航自粛勧告の影響は既に顕在化しており、年初からの動向を引き続き注視していく」としています。

大丸松坂屋では、直近11月と12月の免税売上高の前年比増減率を比較すると、中国人客の売上構成比が高い神戸店と大阪心斎橋店で減少幅が大きかったことが分かりました。心斎橋店は11月は前年同月比20%増となったものの、12月は前年同月比で減少した。担当者は「中国本土以外での免税売上は増加傾向にあるものの、中国人客のシェアが大きいため、全体の減少を相殺できていない」と述べた。

2012年の島嶼買収問題では、中国政府は国民に対し日本への渡航自粛を勧告した。野村総合研究所の木内登英氏は、この推計に基づき、「中国本土と香港への渡航自粛勧告が1年間続いた場合、日本の経済損失は1兆7900億円に達する」と試算している。

2026年2月には春節(旧正月)の休暇で中国人観光客が大量に日本を訪れると予想されるが、両国関係の改善の兆しは見られない。みずほリサーチ&テクノロジーのエコノミスト、東深澤毅氏は、「消費目的での訪日が通常に戻るのは2026年末頃になる可能性がある」と見ている。