富士通とNVIDIA、AI向け半導体を共同開発

富士通は10月3日、米NVIDIAと両社のチップを相互接続し、人工知能(AI)向け半導体を共同開発すると発表した。富士通の半導体は、これまで主に国立研究開発法人のスーパーコンピュータ「富岳」に搭載されていた。

今回の協業は、NVIDIAの半導体を高速に接続することで、演算効率の向上と大幅な電力効率の向上を実現し、データセンターやロボット工学といった新たな需要市場の開拓を目指す。

NVIDIAは、AIコンピューティングに強みを持つグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)の世界的リーダーである。富士通は、コンピューティングの司令塔ともいえる中央処理装置(CPU)を開発している。両社は、2030年までに両社の半導体を単一基板上に統合する計画だ。NVIDIAの技術を活用することで、GPUやCPUを含む複数のチップを超高速で相互接続し、1つのチップのように動作させる。

同日の記者会見で、NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏は、富士通のCPUとの連携により「新たなレベルの省エネと効率化を実現する」と強調した。

電力効率が2倍に向上

富士通の時田隆仁社長は、「これはAI駆動型社会に向けた大きな一歩です」と述べた。両社が共同開発する半導体は、AIデータセンターだけでなく、ロボティクスや自動車といった「フィジカルAI」分野にも展開していく。

AI分野の発展に向けて、富士通は新たなCPUの開発を進めている。英国の半導体設計企業Armのアーキテクチャをベースに、最細2ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)の回路線を持つ「MONAKA」CPUを開発している。

富士通は、他社CPUの2倍の電力効率を目指し、2027年の実用化を目指しています。富士通は、他社の技術を含めたシステムインテグレーションを強みとし、トータルでの省電力化を実現しています。

富士通は「MONAKA」の発売後、2年ごとにモデルアップデートを実施し、2029年には線幅1.4ナノメートルのCPUを投入し、さらなる省電力・高性能化を目指しています。AI半導体市場で約7割のシェアを持つNVIDIAとの提携により、富士通はCPUの販路をさらに拡大していきます。

NVIDIAは、他のCPUメーカーとの協業を拡大する一方で、スーパーコンピュータ開発で培った富士通の省電力技術にも大きな期待を寄せています。

海外のテクノロジー企業は、日本企業の省電力技術に概ね高い評価を寄せています。

10月2日、日立製作所と米国OpenAIは、AIデータセンター向けの電力関連技術に関する協業を発表しました。 OpenAIは、日立の送配電設備や空調設備などの省エネ技術を活用し、データセンターの構築を推進します。

NTTは、米国のインテル、マイクロソフト、グーグルと、次世代光通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」の開発で協業しています。IOWNは、高速・低遅延のデータ処理・通信と、電力の無駄を削減することを目指しています。

また、両社はスーパーコンピュータ分野でも協業しています。

経済安全保障の観点から、自国のデータとインフラを用いてAIを開発・運用する「ソブリンAI」が注目されています。NVIDIAも、日本でのシステム構築で豊富な実績を持つ富士通との提携を活かし、日本市場でのプレゼンスをさらに拡大したいと考えています。

さらに、富士通とNVIDIAは8月、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」の後継機(2030年稼働予定)の開発で協業することを発表しました。両社はCPUとGPUを組み合わせることで、より効率的に強力なコンピューティングパワーを実現します。

NVIDIAは、富士通の国内における広範な顧客基盤にも関心を寄せています。富士通は、 NVIDIAは、製造業や金融業をはじめとする様々な業種、そしてセキュリティ分野を含む政府機関向けのシステムなど、幅広い顧客基盤を有しています。NVIDIAは、これらの顧客基盤を基盤として、自社製品・システムへの高い要求に応えることで、グローバル事業展開をさらに加速させていきます。