タングステンとガリウムというレアメタル価格が14年ぶりの高値に

レアメタル価格が上昇している。自動車エンジンや航空機部品の加工に使用される「超硬工具」の材料であるタングステンは、年初から45%上昇し、半導体材料であるガリウムも44%上昇した。いずれも14年ぶりの高値となっている。価格上昇は中国の輸出規制が原因であり、日本企業は中国以外の生産者からの調達など、対策に追われている。

英国の調査会社アーガス・メディアのデータによると、タングステン製品の原料であり価格指標となるパラタングステン酸アンモニウム(APT)の欧州におけるスポット価格(即決価格)は、7月22日時点で10キログラムあたり約477.5ドルで、年初から約150ドル上昇した。欧米市場におけるガリウムの基準価格は、7月22日時点で1キログラムあたり約827.5ドルで、年初から約250ドル上昇しました。

振り返ると、タングステンとガリウムの価格高騰は2011年頃に発生しました。当時、中国は2010年の中国漁船衝突事故を受けて、日本へのレアアース輸出規制を強化しました。他のレアメタルの輸出も減少し、国際価格が急騰しました。この価格上昇は、中国の輸出規制の影響も受けています。

中国は2023年から主要鉱物の輸出規制を強化し、タングステンも2025年2月から対象となります。中国税関のデータによると、原料となるパラタングステン酸アンモニウム(APT)の輸出は3月から5月までゼロでした。

アドバンストマテリアルジャパン(東京都千代田区)の瀧石雄介氏は、タングステン価格の高騰により、日本企業はベトナムなど他の生産国からより高い価格で購入せざるを得なくなっていると述べた。

ガリウムは2023年8月から中国の輸出規制の対象となり、2025年5月には輸出がゼロになった。6月になっても輸出は完全に回復していない。ガリウムを使用する半導体部品メーカーは、在庫で対応しており「今のところ影響はない」と述べている。また、中国から独立してガリウムを調達する方法を検討していると述べ、警戒を強めている。

難燃剤などに使われるアンチモンは、中国が世界生産量の60%を占めている。アンチモンは2024年9月から中国の輸出規制の対象となっている。2024年末以降、輸出は回復の兆しを見せているものの、供給量は再び減少し、2025年6月には前年比90%以上減少した。

中国の輸出規制強化は、関税をめぐる米中貿易摩擦に端を発している。中国は2025年4月、米国への対抗措置として、電気自動車(EV)部品の主要部品であるレアアース(希土類元素)の輸出規制を実施した。第一生命経済研究所の島峯良清主任研究員は、「米国への報復として、レアアース以外の重要鉱物の輸出規制が再び強化されるのは当然の想定だ」と述べている。

6月の米中閣僚協議を受け、中国はレアアースの輸出規制を緩和すると予想されている。レアアース以外の重要鉱物の輸出規制も段階的に緩和されるとの見方もある。しかし、米国との緊張関係が続く中、中国が再び輸出規制を交渉材料として利用するリスクは否定できない。

2010年に中国が日本に対してレアアース輸出規制を実施した際、日本企業は生産方法の変更やリサイクル率の向上といった対策を講じ、レアアースをはじめとする様々な分野で中国への依存度を下げる傾向が見られた。しかしながら、中国は採掘・精錬コストにおいて依然として優位性を維持しており、主要鉱物資源において依然として優位な地位を維持している。

日本企業の事業リスクを軽減するためには、主要鉱物資源における中国への依存から脱却する必要がある。安全保障の観点からは、日本は政府や企業と連携し、日本の排他的経済水域(EEZ)内の海底に埋蔵されている主要鉱物資源の確保や、鉱物資源の埋蔵量の増強といった代替資源の確保に努める必要がある。