日本、最先端の超伝導量子コンピュータを開発
富士通は、理化学研究所(RIKEN)をはじめとする研究機関と連携し、2030年までに世界最高性能の超伝導量子コンピュータを開発します。この目標は、これまで課題となっていた冷却方法の改良など、故障発生率の低減によって達成されます。新薬開発や材料研究などに応用可能な量子コンピューティング技術は、中国や米国を筆頭に熾烈な競争が繰り広げられています。経済安全保障の観点からも、日本国内での生産の重要性は高まっています。
富士通は、理化学研究所(RIKEN)および産業技術総合研究所と連携し、世界最高性能となる約250論理量子ビットの新型量子コンピュータを開発します。IBMが2029年までに完成を目指している現在の最新鋭モデルは、富士通の量子コンピュータを25%上回る性能になると見込まれています。
富士通は、超伝導と呼ばれる最先端技術を活用します。超伝導とは、装置を極低温に冷却することで電気抵抗をゼロにする技術です。富士通は、冷蔵庫などの基幹部品の調達を海外依存から国内メーカーへの切り替えを検討しています。IHIや大陽日酸などが有力なパートナーとして挙げられていると報じられています。
冷蔵庫の高性能化は、小型化という課題を抱える中で大きな課題となっています。富士通は、小型部品と制御装置を接続する配線を最適化することで、冷蔵庫1台に収めながらも性能向上を目指します。
富士通はまた、ハードウェア性能を補完する高効率コンピューティング技術の研究にも取り組んでいます。大阪大学と共同開発した「STARアーキテクチャ」を活用し、演算要素を独立して制御します。
富士通は、STARアーキテクチャを用いて開発した量子コンピュータが、2024年には、現在のスーパーコンピュータで5年かかる計算を約10時間で完了できることを確認しています。富士通は、ハードウェアとソフトウェアの両面からアプローチすることで、競合製品の計算速度を上回ることを目指しています。
さらに、演算処理における省電力化と製造コストの削減も重要な課題です。富士通は、量子コンピュータに必要なデバイスや回路の数を削減し、制御システムの小型化にも注力します。
富士通は、世界最速と称されるスーパーコンピュータ「富岳」の開発に参画したほか、理化学研究所とも量子コンピュータ分野で協力し、技術開発を継続的に進めてきました。2023年には、日本企業として初めて量子コンピューティングの実用化を達成しました。2025年4月には、IBMの既存機種を上回る性能を持つマシンの市場投入に成功し、2026年にはさらに高性能なモデルを開発する予定です。
量子コンピュータは、産業界に大きな技術革命をもたらすと期待されており、その用途は新薬開発や新素材研究から、金融や電気自動車(EV)など様々な分野に広がっています。しかしながら、計算エラーの多さなどの課題があり、実用化への道のりは依然として険しいものがあります。
量子コンピューティング、人工知能(AI)、高性能半導体といった最先端技術をめぐり、中国と米国を筆頭とした技術覇権争いが激化しています。
経済安全保障上の懸念や米国の関税措置を背景に、各国は技術封鎖と国産化への動きを加速させています。日本政府も、富士通の新型機を含む国産量子コンピュータの開発を支援しています。
富士通は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から約100億円の補助金を受ける予定と報じられています。
量子コンピュータには、超伝導量子コンピュータに加え、トラップイオン、中性原子、光子など、様々な方式があります。多くのスタートアップ企業や世界的な大手テクノロジー企業がこの分野に投資しています。中でも、IBMやGoogleが開発に注力する超伝導方式は、最も大きな可能性を秘めているとされています。実用化が進むにつれて、世界の量子コンピュータ市場は関連産業とともに拡大すると予想されています。