円安が夏の旅行を直撃 海外旅行者数、コロナ後初の減少へ

家計の負担増で海外旅行が手の届かない存在に

東京――大手旅行会社JTBが7月2日に発表した予測によると、今年の夏休み期間(7月15日~8月31日)の海外旅行者数は217万人で、前年比8.8%減となる見込みです。これは2023年の感染症流行以降、初めての前年割れです。

その最大の要因は、続く円安です。

7月に入ってからも東京外国為替市場で円安が進行し、1ドル=162.80円台まで下落し、1986年12月以来約39年半ぶりの安値を記録しました。政府は今年4月末から5月末にかけて過去最大の11兆7300億円の為替介入を実施し、政策金利も1%に引き上げましたが、その効果はほぼ消え去っています。

一般の日本家庭にとって、これは楽しみにしていた海外旅行がますます手の届かないものになることを意味します。

「アメリカに1週間行くのに、昨年より10万円以上高い」

東京都内在住の会社員、田中健太さん(42歳)は、夏休みに家族でハワイへ行く予定でした。「昨年同じプランを調べた時は4人で約110万円でしたが、今年は同じホテルと航空券で130万円超えです」と話します。「子供たちはすごく楽しみにしていたのに、さすがに手が出せず、結局沖縄に変更しました」

田中さんのケースは特別ではありません。JTBの試算では、今年の海外旅行の一人当たりの支出は6.3%増の32万3000円(約2000ドル)に達します。円安による海外での実質的な購買力低下に加え、中東情勢の悪化で航空燃料価格が高騰し、燃油サーチャージが上昇したことも負担を増幅させています。

この高コストが、日本人旅行客を北米やオーストラリアなどの長距離目的地から遠ざけています。代わりに人気を集めているのは、航空運賃が比較的安い近隣地域です。韓国が26.2%で最も人気の目的地となり、台湾が16.2%で続きます。一方、外交関係の悪化により、中国本土への渡航者は前年比で半減すると見込まれています。

国内旅行も苦戦、財布のひもは固く

海外が高いなら国内へ? 現実はそう甘くありません。

JTBの予測によると、今年の国内旅行者数は6900万人で、前年比4.4%減です。物価上昇の影響で一人当たりの支出は3.2%増の4万8500円と見込まれていますが、これはあくまでインフレによる受動的な上昇であり、消費者の積極的な支出意欲の表れではありません。

総務省のデータによると、国内外の旅行消費を含む「文化娯楽」支出は前年比3.1%減少しました。調査機関は、中東情勢の悪化と円安の進行で、旅行費を節約する動きが広がっていると指摘しています。

目的地別では、東京を含む関東地方が19.0%でトップ、次いで近畿地方14.9%、北海道11.2%となっています。

二極化する消費―「節約する人」と「使う人は使う」

注目すべきは、旅行消費の二極化が鮮明になっている点です。

JTBの担当者は「旅行日数を短縮したり、宿泊費を抑えたりする人々がいる一方で、お金をかけても理想の旅を実現したいという人々もいて、二極化が進んでいます」と話します。

多くの人は「時間を節約してお金を節約」する選択をします――滞在日数を短くし、より安い宿泊施設を選び、買い物の予算を減らすのです。一方、収入に余裕のある層は、質の高い旅行体験にお金を惜しみません。

東京の金融関係者は記者に対し、「円安で海外旅行は確かに高くなりましたが、年に一度の家族旅行は妥協したくない。必要なところにはお金を使いますが、その分ほかの出費を抑えています」と語りました。

先行きは不透明

市場アナリストは、円安のリスクは単なる水準そのものではなく、無秩序な下落にあると指摘します。一部の学者は、円相場が1ドル=170円台、あるいはそれ以下に下落する可能性すら予測しています。為替介入が効果を示さなければ、円安傾向はさらに強まる恐れがあります。

夏のひとときを楽しみにしていた日本国民にとって、この夏は「どこに行くか」と「いくら使うか」の間で、やむを得ない選択を迫られる季節となりそうです。