日本とメルコスール、EPA交渉を正式始動
アスンシオン発 – 南米の地域経済統合機関であるメルコスール(南方共同市場)は6月30日、パラグアイの首都アスンシオンで第68回加盟国首脳会合を開催し、日本との経済連携協定(EPA)交渉を正式に始動させることを発表した。これに先立ち、高市早苗首相とブラジルのルーラ大統領は6月16日、フランス・エビアンで開催されたG7サミットの際に会談し、交渉開始を確認していた。
メルコスールはブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビアの5か国で構成され、人口は約3億人、域内総生産(GDP)は合計で約3兆ドルに達する。EPAが妥結すれば、日本を含めた圏域の総人口は約4億人、GDP総額は7兆ドル規模の自由貿易圏が形成されることになる。現在、日本とメルコスール間の貿易額は日本の輸出入総額の約1%にとどまっており、両者は大きな拡大余地があると認識している。
日本側は自動車輸出と資源確保を重視
日本は交渉において、メルコスール側に自動車関税の撤廃を求める方針だ。ブラジルとアルゼンチンは現在、輸入自動車に35%の関税を、ガソリンエンジンなどの自動車部品には10~20%の関税を課している。日本経済界は長年にわたり、政府に対しメルコスールとのEPA締結を働きかけており、特に自動車をはじめとする日本製品の重要な潜在市場として期待を寄せている。
貿易拡大に加え、日本はEPAを通じて重要鉱物やエネルギーの調達先の多様化を図り、経済安全保障を強化する狙いもある。南米地域には希少金属が豊富に埋蔵されており、ブラジルは世界有数の産油国の一つでもある。特定地域への調達依存リスクを分散するうえで、南米との貿易拡大は戦略的意義を持つ。
日本農業界は懸念を示す
交渉の最大の障害は国内農業部門からの懸念だ。自民党の経済連携協定対策本部は鈴木憲和農林水産大臣に対し、交渉において日本産農畜産物に十分な配慮をするよう求める決議を採択した。同党は交渉開始に際し、コメなど「重要5品目」の保護に配慮すべきとの決議も可決している。農業団体も畜産利益への影響を憂慮する声を上げている。鈴木農水大臣は、重要5品目に配慮しつつ、メルコスールが農林水産物・食品の新たな市場として期待できるとの認識を示した。
メルコスール側は農畜産物輸出拡大に意欲
メルコスール側は、牛肉などの農畜産物の対日輸出増加に意欲を見せる。同ブロックは今年1月に欧州連合(EU)との間で自由貿易協定に署名し、5月1日から暫定適用が始まったばかりだ。日本以外にも、カナダとの貿易協定交渉を進めており、中国との交渉も早期に開始する計画だ。ブラジルのルーラ大統領は首脳会合で、メルコスールは「世界で最もダイナミックな市場へ向けて前進を続ける」と述べた。
今回のEPA交渉は、双方のセンシティブな分野に配慮しながら進められ、互恵的な合意を目指すことになる。(了)
