アジアの富豪、世界一の富豪に公然と異議を唱える
孫正義氏、マスク氏の「宇宙データセンター」構想に異論
ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏が、世界一の富豪であるイーロン・マスク氏に対し、珍しく公の場で異論を唱えた。孫氏はこのほどアジア首位の富豪の座に返り咲いたばかりだ。
6月23日、ソフトバンク傘下の通信子会社の定時株主総会で、孫氏はマスク氏が提唱する「宇宙データセンター」構想について、「あまり意味がない」と厳しい見方を示した。
孫氏は、AI競争の勝敗を決めるのは宇宙ではなく、地上の計算能力だと強調した。宇宙にデータセンターを造る最大の利点は電力コストの削減だとされるが、AIデータセンターの運営コスト全体に占める電力費は約7%にすぎないという。その一方で、宇宙への輸送費、保守コスト、通信遅延といった負担は大きくなる。
株主からSpaceXの宇宙データセンター計画について問われると、孫氏は「宇宙分野で成果が見えるまでには十数年かかる。一方で、AIの競争は今後10年ほどで勝負が決まる」と述べた。
もっとも、孫氏はマスク氏を「卓越した変革者」と評価することも忘れなかった。ただし、ソフトバンクとしては、世界各地で大規模な地上型データセンターを整備する方針を明確にした。「先手を打った者が勝つ」と孫氏は語った。
ソフトバンクの宮川潤一社長も同総会で、宇宙での運用にはなお多くの技術的課題があると指摘し、「近い将来、当社がこうした事業に参画することはない」と述べた。
今回の発言の背景には、AIインフラをめぐる二人の大富豪の根本的な考え方の違いがある。
マスク氏率いるSpaceXは、目論見書の中で壮大な宇宙データセンター構想を描いている。スターシップで100万トン規模の計算設備を軌道上に運び、宇宙空間の冷却環境と太陽光を活用して、将来的に最も低コストな計算資源を構築するというものだ。SpaceXは軌道上AI計算衛星を次の成長エンジンと位置づけ、早ければ2028年にも配備を始める計画だ。
一方、孫氏はまったく別の道を選んでいる。WeWorkへの投資失敗などで一時は苦境に立たされたが、現在はAIへの大型投資で巻き返しを図っている。5月31日、ソフトバンクはフランスで最大750億ユーロを投じ、欧州最大規模となるAIデータセンターを建設すると発表した。3月には、米オハイオ州でAI向けデータセンターを整備する構想も示し、投資額は約5000億ドルに上るとされる。
さらにソフトバンクはOpenAIに累計640億ドル超を投資し、約13%の株式を取得している。これにより、マイクロソフトに次ぐ第2位の外部投資家となっている。
