銅価格、過去最高値に迫る
幅広い産業に不可欠な銅価格が高騰している。人工知能(AI)の普及を背景に、データセンターなどの需要が急増している一方、世界最大級の銅鉱山で発生した事故により新規採掘が停滞し、供給不足が深刻化している。米国政府は銅を「重要鉱物」に指定しており、先物市場に投機資金が流入し、価格は過去最高値に迫っている。
銅の国際指標であるロンドン金属取引所(LME)の3ヶ月物先物価格は、10月13日時点で1トンあたり10,820.50ドルに達した。これは、データセンター需要の増加を見込んだ投機資金の流入により、2024年5月に記録した過去最高値11,104.50ドルに迫る水準となっている。
9月8日、世界最大の銅鉱山であるインドネシアのグラスバーグ銅鉱山で土砂崩れが発生した。鉱山運営に携わる米国の鉱山大手フリーポート・マクモラン社は9月24日に不可抗力を宣言し、契約上の供給義務を免除した。同社はまた、インドネシアの子会社の生産量が2026年に約35%減少する見込みだと述べた。
世界第2位の銅鉱山であるグラスバーグ銅鉱山の生産制限は、銅供給に大きな影響を与えている。先物価格は、不可抗力宣言の前日である9月23日の終値から8.5%上昇した。
シティグループは、この事故を受けて世界の銅鉱山供給予測を修正した。同社は、2025年には前年比0.1%増の2,315万トン、2026年には前年比1.3%増の2,346万トンと予測している。これは、2025年と2026年にそれぞれ0.4%増、1.8%増としていた前回の予測から下方修正された。
一方、銅の消費量は中長期的に拡大を続けるとみられる。風力発電所などの再生可能エネルギー施設では銅線が使用され、データセンターの送電網にも銅が必要とされる。
シティグループは、データセンターなどの需要を背景に、2026年には銅の消費量が前年比2.9%増加し、40万トンの供給不足が生じると予測している。事故前の予測と比較すると、不足量は10万トン拡大している。同社は、銅価格が2026年上期までに1トンあたり1万2000ドルに達すると予測している。
需給逼迫への期待から、ファンドなどの投機資金が銅市場に流入している。LMEファンドのポジション(未決済残高)をみると、ネットロングポジション(買いポジションから売りポジションを差し引いたもの)は3日に約5万6000枚となり、約6カ月ぶりの高水準となった。みずほ銀行の野村和知取締役は、「鉱石不足は既に認識されていたが、9月下旬の不可抗力宣言によって需給逼迫への懸念が高まった」と述べた。
希少性が高まる銅確保への動きは加速している。象徴的なのは、米国政府の動きだ。8月下旬、米国政府は銅を「重要鉱物」に指定する法案草案を公表した。米国政府はこの重要鉱物リストを定期的に更新している。重要鉱物に指定されることで、企業は補助金を受けやすくなり、生産ライセンスの審査も簡素化される。
米国は現在、アリゾナ州でレゾリューション銅鉱山の開発を計画しており、同国最大の銅鉱山となる可能性を秘めていますが、一部の住民は依然として開発に反対しています。8月、トランプ大統領は自身のソーシャルメディアでレゾリューション銅鉱山の開発停滞について言及し、「今こそ銅が必要な時だ」と強調し、国内銅生産への関心を高めました。
もちろん、銅鉱山の開発には10年以上かかるため、需要を満たす生産量を迅速に確保することは困難です。マーケット・リスク・アドバイザリーの共同社長である新村尚宏氏は、「鉱山会社は、目先の需要を満たすために新規鉱山を開発するよりも、企業買収に傾倒している」と指摘しています。
最近では、9月初旬に、英国の大手資源会社アングロ・アメリカンがカナダのテック・リソーシズとの合併を発表しました。
鉱山開発は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響などにより、一時的に停滞しています。銅業界関係者は「2028年頃までは新規鉱山の稼働は極めて少なく、現在は底値圏にある」と指摘する。M&A(合併・買収)は活発化しているものの、新規鉱山の稼働は期待しにくく、需給逼迫が続く可能性が高い。足元のピークは上昇トレンドの中間点に過ぎない可能性がある。
金価格が4,200ドルを突破。