EU、ウナギの国際取引の制限を提案へ
EUは、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する「絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約(絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約)」にウナギを組み入れる提案方針を固めた。11月末に開催される締約国会議でこの提案が可決されれば、東アジアにおけるウナギの稚魚やかば焼きの取引は自由ではなくなる。
日本は、この提案に拒否権を行使できるよう、中国や韓国と連携し、関係国への働きかけを行う予定だ。
EUの執行機関である欧州委員会は、ニホンウナギを含む18種のウナギを「絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約」の「付属書2」に掲載するよう、締約国会議に提案する予定だ。既に条約に掲載されているヨーロッパウナギと合わせ、世界のウナギ19種すべてが対象リストに含まれることになる。
EU関係者は、先日加盟国理事会が開催され、欧州委員会の提案が承認されたことを明らかにした。これはEU全体の交渉方針が決定し、締約国への提案提出の準備が整ったことを意味する。
今後、国連食糧農業機関(FAO)は、11月24日から12月5日にウズベキスタンで開催される締約国会合において、科学者らを招集し、この提案の検討・議論を行う予定だ。この提案が可決されるには、加盟国約180カ国の3分の2以上の賛成が必要となる。
EUが方針転換をしない場合、日本政府は主要ウナギ漁業国である中国と韓国と協力し、「資源は十分であり、絶滅の恐れはない」という提案をすることで、参加国を説得していく方針だ。
この提案が可決されれば、日本におけるウナギの流通に大きな影響が出る可能性がある。輸出国が許可証を発行する必要があるからだ。 2024年の日本のウナギの国内供給量は6万3000トンで、そのうち70%は主に中国から活ウナギやかば焼きの形で輸入される。
残りの30%は日本で養殖されているが、稚魚の半分は中国から輸入されている。「純国産」ウナギのうち、日本で漁獲・養殖されているのはわずか15%だ。
東京・豊洲市場における2024年のかば焼きウナギの卸売価格は、前年と同水準の1キログラムあたり約4500円となっている。ある卸売業者は、規制案が採択されれば「(中国の)輸出手続きが複雑化し、価格が上昇する可能性がある」と予測している。
九州の養殖業者は、「絶滅危惧種を食べてもよいのかという世論が高まっており、小売店での売り上げが減少する懸念がある」と述べている。
EUはニホンウナギの資源量が「著しく減少した」と主張している一方、日本は「豊富にある」と反論している。
ニホンウナギは日本から約2,000キロ離れたマリアナ海溝で生まれ、海流に乗って東アジア沿岸まで遡上する。稚魚は漁獲された後、養殖場で6ヶ月から1年育てられ、食用に供される。
日本では水産資源を保護するため、マグロ、イカ、サバといった主要魚種について、科学者による資源調査・評価が行われ、漁獲量に上限が設定されているが、ウナギは漁獲対象とされていない。これは、生態に未解明な点が多く、産卵場所が遠く、親魚や卵の数を把握することが難しいためである。
乱獲と河川環境の悪化により、稚魚の漁獲量は1970年代後半以降、低水準で推移している。国際自然保護連合(IUCN)は2014年にニホンウナギを「絶滅の危険性が高い絶滅危惧種」に指定し、レッドリストに掲載した。