ユニクロ、6期連続で過去最高益更新の見通し
ユニクロを展開するファーストリテイリンググループは10月9日、2026年度(2026年8月期)の連結純利益(IFRS)が前期比微増の4,350億円となる見通しを発表した。6期連続で過去最高益を更新する見通しだが、トランプ大統領の関税導入の影響を全面的に受ける北米事業への懸念は残る。同社は関税の影響を値上げで相殺する計画だが、世界最大の市場である北米における消費低迷のリスクも抱えている。
売上収益(売上高に相当)は2026年度に10%増の3兆7,500億円を見込んでいる。
2025年度(2025年8月期)の北米事業の営業利益は、前期比25%増の2,711億円となる見込みだ。米国では、関税導入前の在庫水準がほぼ底入れした。ファーストリテイリングの岡崎健最高財務責任者(CFO)は、都内で開いた記者会見で「関税によるコスト増は価格調整で吸収した」と述べ、一部商品の価格を既に引き上げたことを明らかにした。
ファーストリテイリングは、関税導入の影響で、2025年度の営業利益(売上高から売上原価、販売費、管理費を差し引いた数値)が約25億円減少すると予想していた。この減益分は値上げで補填すると報じられている。
関税の影響は2026年度以降さらに拡大する。岡崎氏は「価格合理化で吸収していく」と述べ、米国でさらなる値上げに意欲を示した。
記者会見に出席したファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、米国の関税政策について、「関税を課すことは、ある意味で敵対的な行為だ。市場は自由で開かれたものでなければならない」と述べた。また、「貿易の混乱が戦争に発展した事例もある」と述べ、関税政策への強い不満を表明した。
特に懸念されるのは、値上げが売上に与える影響だ。米国の個人消費は依然として堅調だが、ユニクロの強みはバリュープロポジションにあると広く認識されており、値上げが続けば売上が減少する可能性がある。
ファーストリテイリングは、長年収益の柱となってきた中国市場から成長の重点を他地域に移しており、米国市場の重要性はますます高まっている。
2025年度のユニクロのグレーターチャイナ地域(香港と中国本土)における海外売上高は、前期比4%減の6,502億円となり、5年ぶりの減少となった。北米は前年比25%増の2,711億円、欧州は前年比34%増の3,695億円となった。
米国市場では、ファーストリテイリングはニューヨークやシカゴなどの主要都市に旗艦店をオープンさせている。
ファーストリテイリングは全世界で366の縫製工場(9月時点)を有しており、ベトナムに60工場、バングラデシュに27工場を保有し、米国に輸出している。ベトナムとバングラデシュからの製品には、8月から20%の高関税が課されている。
ファーストリテイリングが6年連続で過去最高益を更新できるかどうかは、コスト転嫁と価格設定のバランスが求められる米国市場における価格戦略にかかっている。競合アパレル企業も米国市場で価格引き上げに着手している。
H&Mの2025年6月から8月までの北米・南米における売上高は、米国を中心に120億スウェーデンクローナで、前年同期比8%減となった。H&Mのダニエル・エルヴェールCEOは、関税の影響は9月から11月以降に強まるとみており、将来的な値上げの可能性を示唆している。
また、米メディアの報道によると、ZARAブランドを保有するスペインのインディテックス・グループは、既に米国市場で一部商品の値上げを実施している。
ファーストリテイリングは9日、2025年度(2025年8月期)の連結純利益が前期比16%増の4330億円になったと発表した。日本におけるユニクロ事業の売上高は前期比10%増の1兆260億円で、アパレル企業として初めて売上高が1兆円を超えた。