韓国ウォンと日本円は上昇し、米ドルは下落した

米国の貿易交渉がアジアの外国為替市場を混乱させている。 5月14日、ニューヨーク外国為替市場で韓国ウォンの対ドル為替レートは前日比2%上昇した。背景には、米国が韓国に対しドル安を迫るよう求めるだろうとの市場の予想がある。この状況は日本円の対米ドル為替レートにも影響を与え、一時は1米ドル=145.70円の範囲に達した。前日に比べ、日本円は1円以上円高、米ドルは円安となった。

韓国ウォンは14日午前の取引で前日比2%上昇し、1ドル=1,380ウォンとなった。この変動の理由は、5月4日から7日までイタリアのミラノで開催されたアジア開発銀行(ADB)年次総会で、米国と韓国が貿易会議を開き、為替レート問題が議題に上がったとブルームバーグが報じたためだ。

トランプ米大統領は、ドル安が米国製造業の競争力向上に役立つと考えていると報じられている。ホワイトハウス経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長も、ヘッジファンド時代に執筆した報告書の中で、主要国に外貨準備を売却させることで米ドル安を誘導する枠組みを提案した。

ミラン氏は4月の演説でこれを否定し、「多くの人が(米政府が)この文書の内容に基づいた政策を秘密裏に実施していると推測しているが、これには事実の根拠がない」と述べた。ブルームバーグはまた、関係筋の話として、米政府はドルの切り下げを求めていないと述べた。その結果、ドル安・ウォン高の傾向は一時的に終息した。

しかし、市場では依然として、米国が貿易赤字を抱えるアジア諸国などに対し、自国通貨を切り上げるよう圧力をかけるだろうとの見方が広がっている。

トランプ政権の貿易交渉に関するニュースがアジアの外国為替市場を混乱させたのは今回が初めてではない。ニュー台湾ドルは5月2日と5日の2営業日で米ドルに対して約10%上昇した。ニュー台湾ドル急騰の背景について、市場では米国が台湾との貿易交渉においてニュー台湾ドルの切り上げ圧力をかけたのではないかとの見方が出ている。

アジアの投資家のポジションが米ドルに傾いていたことも市場のボラティリティの一因となった。米国経済の成長の影響を受け、多くのアジアの投資家は為替レートをヘッジせずに米国への投資を増やした。ファイナンシャル・タイムズは、台湾の生命保険会社が過去10年間に米国資産に7000億ドルを投資したと報じた。

米国が4月に各国との貿易交渉を正式に開始するにつれ、米国が米ドル安を誘導するのではないかという期待が高まると見ている人もいる。台湾の生命保険会社やその他の金融機関は、新台湾ドルの上昇に対処するため、急いで為替ヘッジ策を講じている。ニューヨークに拠点を置くマクロヘッジファンドの最高投資責任者(CIO)は「韓国でも規模は小さいものの、同様のトリガー取引が発生している」と語った。

韓国と台湾はともに、米国財務省の外国為替報告書に指定された「監視リスト」に含まれている。日本もリストに含まれており、市場では米国がこれらの国や地域に通貨切り上げを求める可能性があるとみられている。

加藤勝信財務相が13日の閣議後の記者会見で、20日からカナダで開催される主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議でベンソン米財務長官と為替問題について協議すると明らかにし、市場での憶測も強まっている。

市場では一般的に、為替レートの変動性が短期的に高まるとみられている。米国の金融取引会社、バノックバーン・グローバル・フォレックスのマーク・チャンドラー氏は、「市場は常にネタを探している。購買力平価の観点から見ると、米ドルは著しく過大評価されており、アジア通貨が再び大幅に上昇する可能性が高い」と述べた。