円高は続く
円は幅広い通貨に対して上昇している。 2月6日時点の日経平均株価の騰落率を見ると、G10通貨と呼ばれる主要通貨の中で円の値上がり幅が最も大きいことが分かる。トランプ大統領の関税引き上げの影響が懸念されているが、日本は比較的影響が少ない国とみなされており、資金の安全な避難先となっている。しかし、円高の持続性については疑問がある。
外国為替市場では、円が幅広い通貨に対して上昇した。市場ではトランプ米大統領による関税引き上げの影響が懸念されているが、日本は比較的影響が少ないとみられており、資金の安全な避難先となっている。また、日本銀行(中央銀行)による利上げ期待の高まりも円買いを後押しした。
幅広い通貨の強さに対する円の名目実質為替レートを総合的に示す日経通貨指数(2020年=100)の騰落を見ると(2月6日現在)、G10通貨と呼ばれる主要通貨の中で円が最も上昇している。 2月6日の外国為替市場では、円の対ドル相場が一時1ドル=151.5円を超え、2024年12月中旬以来、約2カ月ぶりの円高・ドル安の最高値を更新した。円はオーストラリアドルに対して5カ月ぶりの高値、ユーロに対しては2カ月ぶりの高値を記録した。
現在、円が買われている背景には、日本銀行の利上げ期待の高まりもある。赤沢良正経済財政再生相は2月5日の衆院予算委員会で「現在の認識としては、依然としてインフレ状態にあるというのが上田一夫総裁の認識と一致している」と述べた。ソニーフィナンシャルグループのチーフエコノミスト、石川久美子氏は「日本政府がインフレを認識していると述べたことで、日銀の利上げ継続が既定路線だと考える市場参加者が増えている」と述べた。
日銀が重視する賃金・物価指標も、早期利上げへの市場期待を裏付けている。厚生労働省が2月5日に発表した2024年12月分の毎月勤労統計調査では、物価変動の影響を除いた実質賃金は2カ月連続でプラスとなった。総務省が1月下旬に発表した全国消費者物価指数(CPI)では、生鮮食品を除いた物価上昇率が3.0%となり、23年8月以来の高水準となった。
世界の中央銀行のほとんどが金融緩和を推進している中、日本は金融引き締めの局面にある。金融政策の方向性の違いにより、日本円はより購入しやすくなりました。
米国が課した追加関税により、多くの国で米ドルに対する通貨価値が下落した。その理由は、米国におけるインフレと金利上昇への認識だ。たとえば、カナダドルは追加関税により大幅に下落しました。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の上野大作主任為替ストラテジストは「関税引き上げの対象とならない通貨でも、貿易関係で売られる可能性がある」と指摘。オーストラリアドルの下落は、米国が2月4日から中国に10%の関税を課すことを背景に起こっている。中国との経済関係が深いオーストラリアでは、中国への輸出の鈍化や経済減速への懸念が高まっている。
日本は関税リスクが比較的少ない国とみなされている。トランプ大統領の第1期目では、日本は鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課せられたが、その規模は他国に比べると比較的小さかった。
SMBC信託銀行の主任為替市場アナリスト、二宮恵子氏は「関税引き上げの対象として明記されていない日本円への安全通貨としての傾向が強まっている」と分析した。三菱UFJモルガン・スタンレーの上野氏は、関税リスクを考慮すると「現時点で購入できる通貨は円かドルだけだ」と述べた。
しかし、円高の持続性については疑問がある。日銀の利上げ期待は高まっているものの、利上げペースは半年に1回程度が中心とみられる。日米の金利差が急激に縮小する事態は考えにくい。外為どっとコム総合研究所の調査部長、神田卓也氏は「現在の円高は、これまでのドル買いからの調整が大部分を占めており、さらなる円高の可能性は高くない」と述べた。