日本、個人輸入に対する税制優遇措置を廃止へ
財務省は、個人輸入に対する税制優遇措置の廃止に向けた調整を進めている。中国の電子商取引(EC)サイトなどがこの制度を利用して日本に商品を低価格で販売し、日本の小売業者が販売する輸入品との価格差を生み出している。各国が輸入品に対する税制優遇措置を調整する中、日本も対策を加速させている。
日本は、個人使用を目的とした輸入品について、課税価格を通常の税率より40%減額する特例措置を廃止する方向で検討を進めている。この特例措置により、輸入品にかかる消費税と関税が軽減される。
例えば、個人使用目的で輸入する海外製品を3万円(約1,386元)相当と申告する場合、この特例措置により課税価格は3万円から1万8,000円に引き下げられ、輸入者の消費税は1,800円(10%)となります。一方、販売目的で輸入する国内小売業者は、消費税として3,000円を支払うことになり、差額は1,200円となります。
この特例措置は、日本国内の個人がECサイトを通じて海外から商品を購入する場合にも適用されます。これが、「Temu」や「SHEIN」といった中国のプラットフォームが低価格で商品を販売できる理由の一つです。そのため、通常の税金が課せられる日本国内の小売業者は、競争上の不利な立場に置かれることになります。
日本の海外ECサイトへの依存度が高まるにつれ、輸入申告件数は2024年度には約2億件に達し、5年間で約4倍に増加しました。こうした輸入の急増は税関の監視を困難にし、偽ブランド品や違法薬物の密輸リスクを高めます。
さらに、輸入税負担を軽減するために、国内販売を目的とした輸入品を個人使用と偽装するといった違反行為も横行しています。大量のスマートフォンが個人所有品として輸入申告される事例も発生しています。
個人輸入品に関する特例措置の廃止については、財務省が年末までに策定する2026年度税制改正大綱に関連内容を盛り込む予定です。
日本政府は1980年に個人輸入品に関する特例措置を導入しました。当時、海外旅行のお土産を持ち帰るという当時としては珍しい習慣を考慮し、個人の関税負担を軽減することを目的としていました。
しかし、インターネットの普及に伴い、こうした特例措置の意義は薄れ、海外のECプラットフォームと国内小売業者の間で不公平な競争が生じています。主要国の中で、このような特例を設けているのは日本のみとみられています。
財務省は、課税価格1万円以下の輸入品を消費税非課税とする「デミニミス・ルール」の見直しも行います。中国などからの低価格品の流入が不公正な価格競争を招いているとの指摘もあります。最も有力な対策は、一定規模以上の売上高を持つEC事業者に対し、消費税の登録と納税を義務付けることです。
中国のECプラットフォームを中心に輸入が急増していることを受け、主要国・地域は相次いで少額輸入品に対する免税制度の見直しを進めています。EUと英国は2021年にVAT(付加価値税)の免税を廃止し、米国は2025年8月に関税の免税を廃止しました。日本も一連の税制改革を通じて対策を講じる予定です。
