日米間で関税協定の詳細をめぐり意見の相違

7月23日、トランプ米政権は日米関税交渉の合意概要を発表しました。適用日や対米投資の枠組みについて、日米双方の説明には多くの食い違いや曖昧な点があります。内容が曖昧なままでは、企業経営に悪影響を及ぼすことになります。日本政府は、日米間の合意内容をまとめた文書を来週にも公表する予定です。同時に、国民の皆様に分かりやすく、簡潔に説明できるよう努めていくことも最優先事項です。

「15%の相互関税は8月1日に発効する見込みだ」と、交渉責任者の赤沢良昌経済財政再生相は7月24日、東京・羽田空港で記者団に述べた。日米両政府は、当初10%から25%に引き上げる予定だった相互関税を15%に引き下げることで合意した。自動車関税を合計27.5%から15%に引き下げることについて、赤沢相は「できるだけ早く実施されることを期待している」と述べた。一方、日本政府関係者も24日、「相互関税よりも後になるだろう」との見解を示した。

米政府が発表した合意概要には、「日本からの輸入品には15%の基本関税が適用される」と記載されているが、適用時期は明記されていない。

赤澤氏は「今後、大統領令の発令など必要な措置が講じられると承知している」と説明した。トランプ大統領による関税は、これまで大統領令に基づき一方的に発動されてきたためだ。

対米輸出の3割を占める日本自動車メーカーは、今回の関税により北米向け輸出価格を大幅に引き下げ、シェア確保のため関税を自前で吸収し、現地での値上げを抑制する戦略をとっている。日本自動車メーカーにとって、これは利益の犠牲を意味する。そのため、新たな関税の適用時期は死活問題となる。

トヨタ自動車の佐藤恒治社長は24日、米国で生産された自動車を日本に逆輸入して販売する問題について「可能だ」と述べた。

日本の対米投資についても不透明な点がある。

「私の指示の下、日本は米国に5500億ドル(約80兆円)を投資する」とトランプ大統領は22日、自身のSNSに投稿した。

米国の文書は、資産と投資家を結びつける枠組みを「投資ビークル」と呼び、投資収益の90%が米国に帰属するとしている。80兆円という金額は、日本政府の年間の税収総額を上回る。

一方、日本側は、5500億ドルは政府系金融機関の出資、融資、債務保証の額を指すと説明した。これは実質的な財政支出ではなく、企業が米国への投資を積極的に促進しない場合は、活用されない可能性がある。日米の投資比率が1:9の場合、利益分配も1:9となるが、投資比率は個々のプロジェクトによって異なる。

日本側は防衛装備品は含まれていないと主張

日本の米国産米の輸入拡大について、米国側の文書は「直ちに75%増加する」と言及した。小泉進次郎農林水産大臣は24日、農林水産省で記者団に対し、米国産米の輸入拡大については「日本側が決定できる」としつつも、「固定された枠組みではない」と述べた。

日本は、米国からの輸入拡大について、関税ゼロの最低市場アクセス(MA)米の枠組み内で行う計画だ。小泉大臣は「総量ベースで見ると、米の輸入量は増加しない」と強調した。

米国側の文書には、「(日本は)毎年数十億ドル規模の米国製防衛装備品を追加購入する」とも記されている。赤澤氏は22日の記者会見で、「合意には防衛費に関する内容は含まれていない」と指摘した。

日本の防衛省関係者も24日、既存の計画の範囲内で武器や装備品を購入することで要件を満たすことができるとの見解を示した。

防衛省は、赤澤氏率いる交渉団に対し、配備計画に基づく将来の購入品目リストと想定額を提示した。交渉団は、日本の対米投資をより大きく見せるため、防衛装備品配備計画に盛り込まれた部分を総額に含めた。

共通文書なし

日米双方の発言と説明に食い違いが生じたのは、通常の貿易交渉とは異なり、今回は双方が共同でまとめた合意文書が作成されなかったためである。日本政府は来週、合意内容に関する合意内容をまとめた文書を発表する予定である。署名は行われない見込みである。

米国との関税協議を終え帰国した石破茂首相は24日、官邸で赤澤氏の報告を聞いた。その後、石破氏は記者団に対し、「現時点で合意文書への署名について具体的な協議は行われていない」と述べた。

石破氏は「米国は大統領令などの措置を講じるだろうし、(日本側は)それを踏まえながら今後の対応策を協議していくことになるだろう」と述べた。

米国は関税交渉で合意した国とも、詳細な合意文書の交換を行っていない。トランプ大統領は7月2日にベトナムとの合意を発表したが、詳細は明らかにしなかった。米国の交渉は多くの国と同時進行しており、定型業務が追いついていない可能性がある。

米国側の交渉責任者であるベサント財務相は23日、FOXニュースのインタビューで、「日本が合意を遵守しない場合、自動車などの関税は25%に戻る」と述べた。日本の履行状況は四半期ごとに評価され、トランプ大統領が満足しない場合は関税率が再び引き上げられると述べた。

ベサント氏の発言について、赤澤氏は24日、「トランプ大統領や米閣僚と話し合った記憶はない」と否定したが、日本にとっては不確定要素となる可能性がある。

日米は合意に至ったものの、関税問題については日本政府は引き続き米国と意思疎通を図っていく。企業などの懸念を払拭するため、相互の理解を深め、適切な情報発信を行っていく必要がある。