TSMC、熊本第2工場を最先端AI半導体生産拠点へ転換検討

TSMCは、2025年10月に熊本県に建設予定の新工場を最先端半導体生産拠点へ転換する計画変更を検討している。TSMCは既に、主流の人工知能(AI)半導体向けに4ナノメートル製造装置の導入に向けた調整を開始している。この計画が実現すれば、日本におけるAI半導体の供給安定化につながるだろう。

米国NVIDIAなどが開発するAI半導体は、各国・各企業から高い需要がある。AIデータセンターの新規建設プロジェクトが相次いでいる日本においても、AI半導体の供給確保は大きな課題となっている。

AI半導体はあらゆる技術革新の基盤となるため、国内供給網の構築は産業競争力の向上に不可欠である。

半導体の線幅が狭いほど、性能は向上する。 TSMCの日本における最初の生産拠点である熊本第一工場(熊本県菊陽町)は、2024年末に生産を開始し、既に車載半導体などに適した12~28ナノメートル製品の生産を開始しています。TSMCの第二工場は当初2027年に生産開始予定で、通信機器向けなどにも適した6~40ナノメートル製品の生産を計画していました。

しかし、世界的な電気自動車(EV)販売の低迷により半導体市場の回復は鈍く、第一工場の稼働率は当初の見込みに達していません。第二工場で4ナノメートル製品の生産が可能になれば、より微細な加工が求められるAI半導体の生産も容易になります。4ナノメートル製品に加え、AI半導体の組み立て工程の設置も検討されています。TSMCは日本国内の需要を見極めた上で、計画の調整を判断する予定です。

現在、第二工場の建設は事実上停止しています。計画調整が決定した場合、当初予定されていた2027年の生産開始時期が遅れる可能性があります。TSMCは日経新聞のインタビューに対し、「日本でのプロジェクトは順調に進捗しています。現在、パートナーと建設工事の詳細や実施計画について協議中です」と述べています。

熊本工場を運営するJASM株式会社(熊本県菊陽町)には、ソニーグループ、デンソー、トヨタ自動車など日本企業から少額の出資を受けています。投資総額は225億ドル(約3.5兆円)で、経済産業省は約1.2兆円の財政支援を決定しています。計画調整により工場の完成が遅れた場合、日本政府の対応が重要になります。

TSMCの生産拠点は台湾に集中しています。経済安全保障の観点からも、日本が輸入半導体への依存度を下げる取り組みはますます重要になっています。

日本政府の支援を受けているラピダスは、2027年から北海道千歳市の工場で2ナノメートル製品の量産を開始する予定です。

半導体大手のマイクロン・テクノロジーは、広島県にAI用半導体メモリの生産工場を新設します。台湾のフォックスコン・テクノロジー・グループは、買収した亀山第二工場(三重県亀山市)を活用し、データセンター向けAIサーバーの生産を計画しています。