スシローを運営するF&LCは、売上高1兆円を目指しています
スシローを運営するフード&ライフカンパニーズ(F&LC)は、好調な業績を維持しています。特に中国や東南アジアをはじめとする海外事業の成長期待に支えられ、8月には時価総額が一時1兆円を超えました。同社は、営業収益を前期比2.3倍に拡大し、10年以内に1兆円達成を目指しています。F&LCは米国市場へのスシロー初出店を計画しており、米国事業は1兆円目標達成に重要な役割を果たすでしょう。
F&LCの山本昌弘社長は11月7日、2025年度(2025年9月期)連結決算(国際会計基準)に関する記者会見で、「中国を中心とした海外スシロー事業は非常に好調で、2026年度(2026年9月期)には海外売上高比率が35%を超える」と述べた。さらに、「2035年度(2035年9月期)には連結売上高1兆円の達成に向け、高い業績を維持していく」という目標を掲げた。
スシローは中国をはじめとするアジアを中心に店舗網を急速に拡大している。2月にはマレーシアにも進出し、10月末時点の海外店舗数は232店舗となり、2024年10月末比で30%増加した。海外売上高も43%増の1,314億円となり、総売上高の31%を占めている。
いちよし経済研究所の主席研究員、鮫島誠一郎氏は、「中国で500店舗を展開するサイゼリヤでさえ、既存店の客層は前年同期比で約8割にとどまっており、外食産業の厳しい状況を示している」と指摘する。スシローの競合であるくら寿司も苦戦を強いられており、2023年に1号店を出店予定だった中国市場から撤退する。鮫島氏はその後、「F&LCは好調な発展傾向を印象づけている」と述べた。
F&LCは11月7日午前、2025年度通期連結決算を発表した。8月6日に上方修正した業績予想を上回る好業績となった。発表を受け、F&LCの株価は前日比307円(4%)高の8018円で取引を終えた。これにより、同社の株価は9月29日以来の8000円台に回復した。
しかし、その後株価は数営業日連続で8000円を割り込み、8月19日に史上最高値8883円を記録するまでの上昇トレンドは一服しました。
理由の一つとして、F&LCが2026年度に過去最高の純利益(240億円)を見込んでいたことが、市場コンセンサスを下回ったことが挙げられます。
F&LCの株価が上昇トレンドに回帰するかどうかは、市場関係者の間でも注目されています。F&LCは2015年に米国で寿司レストランを開店しましたが、その後まもなく撤退しました。現在、寿司居酒屋はボストンに1店舗のみあり、2024年に開店予定です。
米国では寿司の人気が高く、調査会社IBIS Worldのデータによると、米国の寿司レストランの売上高は2025年に332億ドルに達すると予測されており、今後も成長が見込まれています。
米国市場への進出において、競合のくら寿司は既に先行して優位性を築いている。くら寿司は2008年に米国現地法人を設立し、10月末時点で81店舗を展開している。くら寿司は、現地の嗜好に合わせた寿司ネタを提供することで顧客獲得に成功し、2025年8月期の売上高は2億8,280万ドルに達する見込みだ。
スシローも現地のニーズに合わせたメニュー展開を行っているが、日本産の寿司の美味しさを忠実に海外に伝えることに重点を置いている。UBS証券のシニアアナリスト、風早隆宏氏は、「『本物へのこだわり』を掲げるスシローが米国で認知されるかどうかは未知数だ」と見ている。「これは、寿司が世界でどれだけ愛されるかの試金石と言えるだろう」と同氏は述べた。
財務面では、F&LCの自己資本比率は9月末時点で24%となっている。岩井コスモ証券シニアアナリストの清水花一氏は、「F&LCは現在、負債による成長を実現している段階にあり、この比率は許容範囲内だ」と見ている。しかし、くら寿司(2024年10月末時点で自己資本比率40%)や「はま寿司」を運営するイズミゼンホールディングス(2025年3月末時点で自己資本比率30%)といった企業と比較すると、F&LCの自己資本比率は依然として低い。
インフレを背景に出店コストは上昇を続けており、借入残高の多いF&LCにとって、現在の金利環境下では利息支払いのプレッシャーがさらに高まり、財務圧迫につながる可能性もある。
海外事業を統括するF&LC副社長の加藤宏氏は、「2035年度(2035年9月期)までに、米国で100店舗、中国で500店舗まで店舗数を増やす計画です。また、未進出国への店舗展開も進め、売上高1兆円を目指します」と明らかにした。こうした計画の着実な進捗が、株価上昇と利益拡大の鍵となる。
(日経アジアンレビュー)
