世界の環境保護投資と資金調達は2024年に30%減少する

世界の環境保護投資・融資総額は2024年に約4,700億ドルとなり、ピークの2021年から約30%減少。金利上昇や部品価格高騰などのインフレが大きな負担となっている。米国のトランプ政権による反ESG(環境・社会・企業統治)政策の影響で、投資をやめたり、「グリーン」というレッテルを貼られるのを避けて通常の投融資に転じる動きが出ている。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)のデータによると、環境関連事業などに用途を限定した「グリーンローン」や、温室効果ガス削減の度合いに応じて金利を優遇する「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」の世界の融資額は、2024年に4705億ドルとなり、ピークだった2021年から27%減少する見通しだ。

環境保護投融資の観点から見ると、金利上昇やインフレを背景に2022年に減少し、2024年に一時回復の兆しを見せた。しかし、トランプ政権の誕生により、再生可能エネルギー関連の投融資は今や影に包まれている。

「事業継続能力に重大な疑問がある」住宅用太陽光発電事業などを手掛ける米サンノバ・エナジー・インターナショナルは3月、事業継続の危機に直面していると投資家に発表した。この発表は投資家の間で売りを誘発し、サンノバの株価は60%以上下落した。

サンノバは、バイデン政権下でインフレ削減法(IRA)で提案された税制優遇措置の恩恵を受けた企業の一つである。

2022年に成立したインフレ抑制法は、クリーンエネルギーの普及支援などに約3700億ドルを充てると規定している。しかしトランプ大統領は同法などに基づき、気候変動対策のための補助金や融資の凍結を指示している。投資家は補助金に頼るプロジェクトの実際の有効性について懸念を強めている。

さらに、洋上風力発電も逆風に直面している。トランプ政権は、風力発電に使用される公有地のリースと承認のプロセスを一時停止するよう指示する大統領令を発令した。世界最大の送電線会社であるイタリアのプリスミアン・グループは1月、当初米国に建設予定だった洋上風力発電所向けケーブル工場プロジェクトを断念すると発表した。

世界的には、2022年から現在にかけて、米国や欧州の中央銀行による金利の急激な引き上げによる資金調達コストの増加、さらに資材費や建設費の高騰などのインフレの影響により、環境投資や資金調達は減速傾向にあります。

欧州での「グリーンウォッシング」への批判の高まりに伴う規制強化も大きな負担となっている。

反ESGの雰囲気が強まり、監督が厳しくなるにつれ、投融資による脱炭素化効果をより厳しく見る傾向が強まっています。大手邦銀関係者は「石油業界などではグリーンウォッシングとの批判を避けるため、環境投融資の表示を積極的に避ける傾向がある」と話す。

洋上風力の開発コストが高騰し、プロジェクトの中止が相次いでいる。デンマークの世界最大の洋上風力発電会社オーステッドは、建設費と金利の上昇を理由に、2024年10月から12月までの米国事業で121億デンマーククローネの減損損失を計上した。

オーステッド社の元CEOマズニパー氏は、「当社は米国市場の洋上風力発電業界が直面している複雑さと不確実性を克服し続けている」と述べた。

環境投資や資金調達の勢いを維持しようとする動きもあります。英国の大手年金基金ピープルズ・ペンションは、主な投資先を米国からESGを重視するフランスに移した。

現時点では、日本における脱炭素投資・融資の勢いは衰えておらず、今後も緩やかな成長傾向が続くとの見方が多い。しかし、脱炭素化をめぐる国際的な議論が不透明になる中、トランプ政権の反ESG政策が日本国内企業に影響を及ぼすことは避けられないかもしれない。