円安は続くのか?

外国為替市場では円安が加速しており、過去1ヶ月で円はドルに対して約5%下落しました。元財務大臣で現アジア開発銀行総裁の神田正人氏は、昨年7月の為替介入以来、1ヶ月で5%もの円安は「極めて顕著」だと述べています。

現在の動向は、市場が円売り・ドル買いを継続的に行うことで、日本政府の円安許容度を試していることを示しています。

外国為替市場における円売り・ドル買いの動きは続いています。11月3日のニューヨーク市場の終値時点で、円は1ドル=154円15~25銭でした。11月4日午前の東京市場でも、円は主に154円強のレンジで推移しました。 10月30日には一時154円台半ばまで下落し、今年2月以来8か月ぶりの安値を更新した。

ニューヨーク市場の終値ベースで、21営業日前と比較すると、11月3日時点での下落率は4.4%となった。21営業日はおよそ1か月に相当し、10月30日の4.6%下落は今年7月31日(4.7%)以来の最大の下落率となった。ここ数日では、下落率が4%を超える日が続いていた。

神田正人財務相は昨年7月12日、為替市場への介入の是非について「コメントしない」と述べた。しかし、その後財務省が発表したデータによると、日本政府と日本銀行(中央銀行)は昨年7月11日と12日の2日間連続で円買い・ドル売り介入を実施したことが明らかになった。金融当局がボラティリティが「過剰」と判断し介入に踏み切る際、神田正人氏が言及した5%の変動幅は、しばしば判断基準とされる。

過去の介入前21営業日の下落率をみると、2022年9月21日は5.1%、同年10月20日は4.0%、2024年4月26日は4.1%だった。2024年7月10日は2.8%だったが、その1週間前には4%を超えていた。

しかし、過去1ヶ月で5%の下落は、日本政府が為替介入を行うための厳格な条件ではない。今年1月初旬と7月下旬、円の対ドルでの下落が21営業日で5%に迫った際も、日本の金融当局は介入を行わなかった。

10月30日、日銀は政策金利の据え置きを決定し、その後、円安・ドル高が進行した。日本生命科学研究所のチーフエコノミスト、上野剛氏は、「政府は日銀が利上げを見送ったことを歓迎するが、円安を阻止するために介入すれば、矛盾が生じ、米国への説明も困難になる」と述べた。また、「市場は既に、円安に対する政府内の危機意識の欠如を目の当たりにしている。短期的には、円は更なる下落余地を探り続ける可能性がある」と指摘した。

日銀が現状維持を決定した翌日の10月31日、片山さつき財務大臣は、円安の進行は「現状ではやや一方的かつ急速な動きを見せている」と指摘しつつも、「現状においては極めて妥当な判断だ」と日銀の判断を評価した。

しかしながら、円安の勢いは足元で強まっている。 10月31日の片山氏の警告発言を受けて、円は当初上昇し、市場は為替介入の可能性に敏感になった。日本政府の円安容認度を巡る思惑が織り込まれつつ、市場は緩やかに円売り・ドル買いの動きを続けた。