三菱電機、中国で産業用ロボットの完全なサプライチェーンを構築する計画
三菱電機は、産業用ロボットなど主力の工場自動化事業について、中国でのサプライチェーンを調整する。製品や部品の大半を日本から輸出する体制を縮小し、現地企業と連携して安価な製品を調達する。同社は米国のトランプ政権の誕生を踏まえ、可能な限り中国で完全なサプライチェーンを構築していく。
同社の増田邦明最高財務責任者(CFO)が日本経済新聞(中国語版:日経中国語サイト)のインタビューでこの計画を明らかにした。 2025年度(2026年3月期)に、工場自動化関連の中国企業への出資を含めた協力について協議する。
日本からの輸入を減らす
増田CFOは「現在は中国市場で販売するために(日本などから)製品を輸入しているが、今後は中国国内での調達のみで需要に応えていく」と語った。
まず、三菱電機は中国現地企業から安価な工場自動化設備を購入する。増田氏は「地元メーカーの製品は三菱電機の第2ブランドとして位置づけ、保守・サービスも三菱電機がサポートする」と語った。
高額・高性能なFA機器については、今後の状況をみて判断します。三菱は現在、名古屋製作所をマザー工場として、製造装置に指示を出す「シーケンサー」を生産している。同社は中国のほか、タイやインドにも生産拠点を置いているが、生産量の70%は日本で生産されている。中国市場で販売する製品の大半は日本からの輸入品だが、同社は段階的に中国での現地生産を進め、日本への依存度を徐々に下げていくことを検討している。
また、地元企業との連携により、お客様の多様なニーズにお応えできるよう商品ラインナップを拡充してまいります。増田氏は「人工知能(AI)への投資は非常に好調で、今後も堅調な受注が続くことを期待している」と語った。
ファクトリーオートメーション事業は三菱電機の連結営業利益の20%を占め、空調事業と同じく同社の中核事業となっている。当社は、機械の動きを制御するシーケンサーやCNC(コンピュータ数値制御装置)装置などの装置の開発・製造に加え、最近では装置から得られるデータを活用して工場内の効率化や脱炭素化を実現するサービスにも取り組んでいます。
データ活用サービスでは米国の大手IT企業が先行しているが、三菱電機の漆間啓社長は「産業用ハードウエアのデータ活用と技術で培った経験が当社の強みだ」と話す。
日立製作所が開始した「Lumada」、三菱電機が開始した「Serendie」、富士通が開始した「Uvance」など、日本の製造業各社はデジタルトランスフォーメーションの基盤サービスを相次いで開始している。他社との差別化が難しくなる中、ファクトリーオートメーションを中心とする工場制御機器からのデータが三菱電機の次なる成長を支える鍵となる。その前提となる安定したサプライチェーンの確保は最優先課題です。
米国向け調達ネットワークの再考
三菱電機は米国向け製品の調達網の調整についても協議する。米国は中国、メキシコ、カナダからの製品に対する関税を強化した。三菱電機は米国でエアコンやFA機器などを販売しており、増田氏は「(3カ国から調達する)部品の調整が行われる可能性が高い」と語った。
三菱電機は、空調事業について、中国とタイで生産している主要部品の生産を米国ケンタッキー州に移管することを決定した。今後は、現地生産比率を高めるため、既存工場の転換・拡張も推進してまいります。増田氏は「米国経済が米国内で孤立し、外界から完全に遮断される事態も考えられないわけではない」との見方を示した。今後、対策を拡大するか縮小するかについては、状況に応じて慎重に進めるとした。
三菱電機の2023年度の北米向け売上高は6,970億円、中国向けは5,323億円で、それぞれ連結売上高の13%、10%を占める。
三菱電機は2024年10月、大型プロジェクトへの投資の遅れにより、2024年度のファクトリーオートメーション事業の業績予想を下方修正した。営業収益は7,100億円(従来予想7,300億円)、営業利益は700億円(従来予想880億円)とした。増田氏は「ファクトリーオートメーション事業が今年度中に完全回復するのは難しい」と述べた。
