資生堂の中国での収益は引き続き減少
日本の資生堂は2月10日、2024年度(2024年12月期)の連結純損益(国際会計基準)が108億円の赤字(前期は217億円の黒字)になったと発表した。特殊要因により利益は減少したが、中国での売上減少傾向は止まらず、利益が保証されるわけではない。資生堂は収益性の改善を加速するため、世界各地で店舗閉鎖や人員削減を進める。
2024年度の連結最終利益は当初予想の60億円の黒字から3年ぶりに最終赤字に転落した。資生堂は、2021年に販売した「ベアミネラル」など化粧品3ブランドについて、販売価格を回収できない可能性があるとして、128億円の引当金を積み立てたと発表した。営業利益は2%増の9,905億円となった。
資生堂の藤原健太郎社長は10日、東京都内で開いた記者会見で「(引当金の積み増しによる損失は)一時的なもので、現金支出を伴うものではない。引き続き完全回復に向けて取り組んでいく」と述べ、最終的な損失は一時的なものだとした。しかし、中国での事業低迷が利益水準を押し下げている。
中国経済の減速や現地メーカーとの価格競争激化により、中国国内の免税品販売を中心としたトラベルリテール事業は大幅に減速した。資生堂のトラベルリテール事業は2024年度の営業収益が1078億円となり、前年度比20%減少した。中国におけるその他の事業を含めると、連結売上高の40%を中国が占めます。
「中国のハワイ」と呼ばれる海南島の免税店の売り上げは前年比で30%以上減少し、中国本土の店舗売り上げも減少した。このため同社は、2024年に中国で赤字店舗を削減したほか、日本でも美容部員ら約1500人の早期退職を進め、損益改善に努めた。
利益確保のためにはコスト削減が最優先課題だ。藤原氏は10日の記者会見でも「25年には構造改革の範囲が世界に広がる。難しい決断も迫られる。約束は果たさなければならない」と強調した。
資生堂は、中国と日本での構造改革に加え、世界的にさらなるコスト削減を進める。 2025年度には構造改革に230億円を投じる。同社は米国を中心に赤字店舗を閉鎖し、欧州やアジアなどでも人員削減や赤字ブランド削減を行う。また、世界各地の工場の自動化や業務効率化を推進し、2026年度までに2025年度比でグローバルコストを250億円削減する見通しだ。
一方、JPモルガン証券のシニアアナリスト、桑原明子氏は「構造改革による収益改善だけでなく、売上高の伸びも考慮することが今後は鍵になる」と指摘した。
資生堂は同日、2025年度の連結売上高が前年度とほぼ同額の9950億円になるとの見通しを発表した。連結売上高は微増ではあるものの、2022年度(1兆673億円)以降は1兆円を下回った。最終利益は2023年度比約7割減の60億円となる見込みだ。
藤原氏は10日の記者会見で「企業価値の最大化には成長が不可欠だ」と強調した。資生堂は、2024年度に5,250億円の売上を創出し、連結売上収益の半分を占める「クレ・ド・ポー ボーテ」など3つのブランドを基幹ブランドとして成長の原動力に位置付けている。 2025年度だけでも、3つのブランドを中心に広告宣伝費や店頭プロモーションに100億円を追加投資し、グローバル事業の拡大を図る。