トランプ大統領、ブラジルに50%の関税を提案

トランプ米大統領は7月9日、8月1日からブラジルに対し50%の新たな相互関税率を適用すると発表した。これは従来の5倍にあたる。米国はルラ政権への不満を表明し、ブラジル政府に対し、虚偽情報対策の撤回と、トランプ大統領と親しいボルソナロ前大統領の裁判中止を要求した。9日に新たな関税を発表した国は8カ国ある。

トランプ氏は自身のSNSに書簡を掲載し、8カ国に対し新たな相互関税率を通知した。フィリピンは20%、ブルネイとモルドバは25%、スリランカ、アルジェリア、イラク、リビアは30%。ブラジルの50%が際立っている。

トランプ大統領は7日、日本と韓国を含む14カ国に宛てた書簡を初めて公開し、8月1日から新たな税率で関税を課すと表明した。トランプ大統領はソーシャルメディアで、このスケジュールは「変更されない」と述べた。ブラジルへの書簡は、米国東部時間9日午後9時(北京時間10日早朝)に自身のソーシャルメディアで公開された。

米国はブラジルとの貿易黒字がわずかであるため、トランプ政権が4月に相互関税を発表した際、ブラジルに提案した税率は基本税率のわずか10%だった。

書簡の中でトランプ大統領は、ブラジル政府のデジタル関連政策は米国企業を不当に攻撃しているとし、通商法301条に基づく調査を米国通商代表部(USTR)に指示すると述べた。

調査結果に基づき、トランプ政権は50%の相互関税を根拠に、ブラジルに対し更なる報復関税を課す可能性がある。ブラジル政府はトランプ大統領の書簡を受け、9日に緊急会議を開いた。

ブラジル前大統領をめぐる対立

書簡の中で、トランプ大統領はブラジルにおけるボルソナロ前大統領の裁判は「魔女狩りであり、直ちに中止されなければならない」と述べた。ボルソナロ氏はクーデター計画などの罪で起訴されている。

トランプ大統領は7日にも、自身のSNSに「ボルソナロ氏に何もするな」と投稿し、ブラジルは総選挙を実施する必要があると主張した。

ブラジル大統領府は「我々は主権国家であり、監視は受け入れない」と述べ、トランプ大統領に強く反対した。7日と8日に開催されたBRICS首脳会議の議長声明でも、ルラ大統領は「我々の問題について話さないでくれ」と発言し、両者の対立は激化した。

トランプ大統領は書簡の中で、ブラジルの偽情報対策を批判し、「これはアメリカのソーシャルメディアに対する違法な検閲だ」と述べた。

ブラジル最高裁判所は、偽情報を拡散しているとして有害と判断されたアカウントの削除を2024年までに義務付けている。この命令に従わなかったため、X(旧Twitter)はブラジルで1か月間利用禁止となった。削除を求められたアカウントは、主にブラジルのボルソナロ大統領支持者によるものだ。

トランプ大統領はブラジルの措置に反対を表明した。トランプ大統領のSNS「Truth Social」の運営会社は、ブラジルの右翼アカウントの削除をめぐって、ブラジル最高裁判所の判事と法廷闘争を行っている。

欧州連合(EU)との最終協議は進んでいるのか?

米国の主要貿易相手国のうち、欧州連合(EU)、インド、台湾に対する関税率は未だ発表されていない。このうち、欧州連合(EU)に対しては、新たな関税率を通知する書簡の送付を延期することが決定された。トランプ大統領は8日の閣議で、「(EUへの送付は)2日後(10日)になるだろう」と述べた。

2日間の猶予は、交渉の最終段階を迅速化するためのものとみられる。トランプ大統領は「EUは米国に対して非常に良い姿勢を示している」と述べ、米国がEUとの協議に積極的に応じる姿勢を示唆した。

米国とEUは当初、9日を期限として関税交渉に集中していた。米国は当初、期限切れ後、EUからの輸入品に50%の関税を課す予定だった。

ブルームバーグは、EUが航空機や酒類などの重要品目の税率を8月1日以降に50%に引き上げることを回避するため、米国と暫定合意を目指していると報じた。

EUはまた、自動車関税の引き下げも求めた。ウォールストリート・ジャーナルなどの報道によると、欧州の自動車メーカーの米国内での生産を基準に、欧州から輸出される自動車にかかる関税の負担を軽減する措置を米国と協議しているという。