円高は続くのでしょうか?
今年に入ってから、円ドル為替レートと日本の長期金利の連動性がますます顕著になってきた。日本銀行(中央銀行)は「金利のある世界」に向けた取り組みを明確に進めており、円金利の上昇は市場では円高・ドル安の要因として強く意識されている。今後、円の為替レートは米国の金利よりも日本の国内金利の影響を大きく受ける可能性がある。
円為替レートと日本の長期金利のチャートを並べて比較すると、昨年までは円為替レートは金利上昇にほとんど反応しなかったが、2025年以降は両者の相関性が高まっていることがわかる。外国為替レートは2通貨間の金利差を反映することができますが、日本銀行は長らくマイナス金利政策を実施しているため、円為替レートは常に米国の金融政策の動向に影響を受けています。
昨年春に日本銀行がマイナス金利政策を解除して以降、ゼロ金利に近い状況が続いており、円為替レートと円金利の連動性は弱い。しかし、今年1月の金融政策決定会合で日本銀行が政策金利を0.5%程度に引き上げたことで状況は一変した。新たな利上げが予定より早く実施されるとの観測が浮上しており、その場合、長期金利は2月21日に約1.455%まで上昇し、約15年ぶりの高水準に達した。長期金利の上昇を背景に円相場も上昇し、1ドル=150円の大台を突破した。
マーケット・リスク・アドバイザリーの深谷浩司氏は「円相場を注視し、予想外の円高に備える必要があるかもしれない」と述べ、米国の景気減速と物価上昇の同時進行に市場が警戒を強めるにつれ、金利引き上げを主張する日本に投資資金が流れやすくなると付け加えた。
ユーロは主要通貨の一つであるため、投資ファンドのターゲットになる可能性は低い。理由は、2月23日のドイツ総選挙でキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)からなる最大野党連合が政権に復帰すると見込まれており、ユーロ圏経済の見通しが不透明なためだ。
中央銀行の政策変更により、市場が日本銀行の動きに注目しやすくなる。これまでのFRBの利下げに比べ、日本銀行の利上げは極めて緩やかだ。市場は日本銀行よりもFRBの金融政策運営に注目する傾向がある。連邦準備制度理事会は昨年9月に0.5%の利下げを決定し、昨年12月までに3回連続で計1%の柔軟な利下げを実施した。一方、日本銀行は昨年7月に利上げを決定した後、今年1月まで追加利上げを決定せず、約半年の空白期間を置いた。
しかし、2025年以降、日本とアメリカの状況は逆転しました。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2月、米議会証言で「再度利下げする切迫した理由はない」と述べ、様子見姿勢を示した。日銀の高田創審議委員も講演で「(経済・物価の)期待が実現すれば、さらなるシフトチェンジの局面に入る」と述べ、追加利上げに前向きな姿勢を示した。市場は現在、FRBよりも日本銀行の政策運営に注目が集まる環境へと移行しつつある。
しかし、円高がさらに進むことに対しては懐疑的な見方もある。みずほ銀行が米商品先物取引委員会(CFTC)のデータを基に算出したヘッジファンドなど投機筋の対ドル円売買動向を見ると、2月以降、投機筋の円買い・ドル売りが急速に拡大している。
みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「投機筋の円買いが短期間でこれほど増えるのは珍しい」と述べ、状況次第では利益確定を狙った円売りが急速に増える可能性もあると指摘した。ヘッジファンドの円買いを支えているのは、日本銀行が可能な限り早期に金利引き上げに前向きになるだろうという市場の期待だ。日銀が急激な利上げに慎重姿勢を見せれば、円売りが加速することは否定できない。
日本銀行にとって、円相場の急激な変動は機動的な政策運営の障害となる。市場が日銀の動向に注目する中、市場との対話がますます重要になる。
