岸田文雄氏が石破茂氏に代わって首相の座に戻るのか?

3年に一度の参議院選挙が始まりました。与党自民党と各党の合意に基づき、7月3日に候補者名簿が公表され、20日に18歳以上の全国民による自主投票が実施されます。同日20時以降に開票が開始され、選挙結果が発表されます。

今回の参議院選挙は、与党自民党にとって大きな試金石となるだけでなく、石破茂現首相の政治的運命を左右する重要な一戦でもあります。自民党が参議院で過半数の議席を確保できない場合、石破茂首相の退陣リスクは一気に高まります。

2024年に退任予定の岸田文雄元首相は、6月25日に埼玉県内で行った演説で、「与党が過半数の議席を確保できない場合、政局はますます不透明になり、政権交代の可能性もある」と明言しました。

日本の政界の重鎮が、自民党が総選挙で敗北した場合、石破茂首相に辞任を検討すべきだと公に示唆したのは、これが初めてです。

そのため、今年67歳になる岸田文雄氏が、安倍晋三氏を見習って「二刀流」で首相の座に返り咲きたいのではないかとの憶測も飛び交いました。

石破茂氏は2024年10月1日、岸田文雄氏の後を継ぎ、第102代総理大臣に就任しました。彼の政権獲得は、かつて大きな期待を集めていました。岸田文雄氏と同い年のこのベテラン政治家は、率直な物言いと庶民的なイメージで知られています。しかし、就任からわずか1ヶ月足らずで、石破茂氏は大胆かつリスクの高い決断を下しました。衆議院を事前に解散し、総選挙を実施するという決断です。「建国崩壊」と自ら称したこの総選挙は、彼の政治人生におけるワーテルローとなりました。

2024年10月27日に投開票された衆議院選挙の結果は衝撃的だった。自民党と公明党による連立与党はわずか215議席にとどまり、衆議院の過半数(233議席)を超えるという目標は達成できなかった。自民党が衆議院選挙で大敗したのは2009年以来のことだ。さらに、政治資金スキャンダルに関与した46人の候補者のうち、半数以上が落選し、党内の派閥争いや国民の不満が露呈した。「ニューフェイス」による自民党イメージ刷新を狙った石破氏の戦略は、明らかに失敗に終わった。

11月に内閣改造を行ったものの、政権の基盤は揺らいでいる。衆議院での敗北により、自民党は国会運営において「部分的な連携」に頼らざるを得なくなり、日本維新の会や国民民主党といった野党と個別に交渉せざるを得なくなった。こうした「少数与党」の状況は、石破氏のあらゆる行動を不安定なものにしている。

そして、今回の参議院選挙は、石破氏にとって間違いなく「生死を分ける戦い」となる。参議院は248議席あり、その半分にあたる124議席が改選される。さらに神奈川選挙区の補欠選挙も加えると、合計125議席が再配分される。現在、自民党と公明党は参議院で改選のない議席を合わせて68議席を有しており、与党連合が参議院(125議席)の過半数を確保するには、今回の選挙で少なくとも57議席を獲得する必要がある。表面上、この目標は達成不可能ではないように思えるかもしれないが、日本の政治の現実は数字よりもはるかに複雑である。

近年、参議院選挙は与党の「中間試験」とみなされることが多く、有権者はしばしばこの機会を利用して政権への不満を表明する。2007年と2010年の参議院選挙では、スキャンダルや経済問題により自民党は惨敗を喫し、政権の混乱や政権交代さえも招いた。現在、石破茂首相が直面する課題はさらに深刻である。インフレ、賃金の停滞、政治資金スキャンダルの後遺症、そして自民党の低支持率は、有権者の不満の高まりにつながっている。数日前に行われた東京都議会議員選挙では、自民党が「第一党」の座から転落し、不吉な兆しを見せている。自民党が参院選で再び敗北し、議席の過半数を失った場合、石破茂首相の地位維持は困難になる可能性がある。

石破氏の苦境は、外圧と内政の制約の両方に起因する。最大の問題は経済であり、これは国民の心に重くのしかかる大きな重石となっている。石破氏は就任後、経済再生を推進すると公約したが、現実は物価高騰、賃金上昇の鈍化、そして円安の進行といった状況にある。2024年の衆院選を前に、内閣支持率は20%を割り込み、現状の経済状況に対する有権者の強い不満を反映している。そして、わずか数ヶ月で説得力のある経済対策を打ち出せなかったことで、石破氏の政権基盤はさらに弱体化している。

党内の派閥間の対立もまた、石破氏の弱点となっている。自民党内の「非主流派」である石破氏は、長年、安倍晋三氏をはじめとする主流派と距離を置いてきた。石破氏の当選は、ある意味では岸田文雄氏と安倍派の妥協の結果であった。しかし、衆院選での敗北は、党内で石破氏への不信感を増大させた。特に、旧安倍派や高市早苗経済再生担当相といった保守勢力は、石破氏のリーダーシップに不満を表明している。現時点では党内に明確な「反石破」勢力は存在しないものの、参院選が再び失敗に終われば、これらの潜在的な反対勢力は動きを伺う可能性が高い。

参院選の失敗により石破茂氏が退陣した場合、岸田文雄氏が後継者となるのだろうか?

岸田文雄氏は2024年8月、自民党総裁選への出馬を断念し、その後、首相を辞任した。岸田氏の辞任は、政治資金スキャンダルと自民党の低支持率の「責任」として捉えられている。しかし、岸田氏は完全に政界から退いたわけではない。自民党幹部であり、洪池会(岸田派)代表として、依然として党内で大きな影響力を持っている。

日本の政治において「二度目の敗北」は前例がない。安倍晋三氏は2006年9月に首相に就任し、1年後に辞任した。2012年12月に再び政権に就き、約8年間連続で首相の座に就き、憲政史上最長の在任期間を記録した。

岸田氏自身も、2021年から2024年の3年間の任期中、着実な外交手腕と党内調整能力を発揮しました。在任中、日米同盟の強化を推進し、韓国との関係修復に尽力し、2023年には戦後初めて日本の首相としてウクライナを訪問しました。これらの外交実績は、岸田氏を国際社会から高い評価と政治的資本の維持に繋がっています。

さらに、岸田氏の「穏健派」イメージと党内派閥からの支持は、首相復帰の潜在的な強みとなります。石破茂氏が退陣した場合、自民党は党内の分裂を橋渡しし、国民の信頼を回復できるリーダーを必要としており、岸田氏の経験と経歴は間違いなくこのニーズを満たすでしょう。

しかし、岸田氏の政権復帰への道は平坦ではありません。第一に、彼の辞任は主に政治資金スキャンダルと低い支持率によるものであり、有権者の信頼は未だ完全に回復していません。 2024年の衆院選後も自民党の支持率は低迷しており、岸田氏が再選されたとしても、すぐにこの状況を覆すのは難しいだろう。第二に、党内競争の激化も大きな障害となっている。高市早苗氏や小泉進次郎氏といった新世代の政治家たちが、首相の座を狙う有力候補となる可能性がある。特に、2024年の自民党総裁選で好成績を収めた高市早苗氏は、党内の保守勢力が台頭すれば、より支持率が高まる可能性がある。

7月の参院選は、リハーサルなしの劇のようなものだ。石破茂氏が舞台の中央に立っているものの、スポットライトは不透明だ。自民党が敗北すれば、彼の首相への道はここで終わるかもしれない。岸田文雄氏が「二冠」を狙えるかどうかは、自民党がこの「ベテラン」に賭ける覚悟があるかどうかにかかっている。結果に関わらず、今回の選挙は日本の未来に大きな影響を与えるだろう。